三叉神経痛・顔面痙攣
血管が特定の神経の特定の場所に触れることによって、顔の痛みや顔の筋肉の痙攣が起きることがあります。このようにして起こる顔の痛みは、三叉神経痛という病気です。又、顔の痙攣は、主に眼の周囲の筋肉がピクピクして目を開けていられない状態になるもので、顔面痙攣と呼ばれています(疲れてまぶたがピクピクするのとは違います)。
神経はとても大事なものなので、専用の鞘に守られています。通常は、血管が神経に触っても鞘に守られているので、異常が出ることはありません。しかし、神経の鞘を作る細胞が、脳内と脳外で異なっているため、その境目にわずかな鞘の隙間があり、そこに血管が触れると、裸の神経に直接影響を及ぼし、痛み・痙攣などが生じると考えられています。
三叉神経痛の治療
よく”顔面神経痛”という言葉を耳にされると思います。顔が断続的に痛くなる病気ですが、実は正しい言葉ではありません。”顔面神経”は、基本的に運動神経で(100%ではありませんが・・・)、顔の表情筋を動かす神経なのです。顔の感覚に関わる神経は三叉神経といいます。その名の通り、途中で三つに分かれ、”おでこ”、”ほっぺた”、”あご”の感覚情報を脳に伝えます。この三叉神経の鞘の隙間に血管が触っておきるのが、”三叉神経痛”です。
三叉神経痛の場合は、まず薬で治療をします。カルバマゼピン(テグレトールR)という薬が三叉神経痛の特効薬として知られています。この薬は、三叉神経痛に極めて良く効く薬で、逆に、この薬が効かない顔の痛みは三叉神経痛ではない、と考える医師もいるくらいです。しかし、この薬は眠気を伴いやすいという欠点があります。服用しているうちに効きが悪くなることがあり、そのような場合には増量して対処するのですが、眠気のために増量できない方がいます。また、この薬にアレルギーのある方は使用できません。
そのような場合には、触っている血管を神経からはずす手術をします。
顔面痙攣の治療
顔面痙攣は、顔の筋肉が本人の意思とは関係なく、ぴくついたり、引きつったりする病気です。通常は、目の周囲から始まり、ひどくなると目を開けていられなくなったり、口が曲がってしまったりします。
顔面痙攣の場合はまず注射で治療します。これは、ボツリヌスという食中毒の原因としてよく知られている毒素の成分を、痙攣している顔面の筋肉に注射し、人工的に麻痺を作ることによって痙攣を抑えようというものです。効果は半年ほど続き、当院外来で受けることができます。非常に安全で効果的な治療ですが、効果は永続的なものではありません。人によっては、3ヶ月ほどしか持続しない方もいるため、年に数回の注射が必要な場合もあります。特に若い方は、その後数十年にわたり、毎年数回のボツリヌス毒素の注射を必要とすることになりますが、精神的にも経済的にも負担は決して軽いものではありません。
そのような場合には、触っている血管を神経からはずす手術をします。
最新の診断方法
当院では、マルチボリューム法という最新の方法で、血管と神経の状態を検査します。
現在、多くの病院では平面的な画像で血管が神経を圧迫している様子を評価しています。当院でも、2006年までは図1のような画像を用いて、三叉神経痛・顔面痙攣の診断を行ってきましたが、具体的な圧迫の様子はつかめませんでした。しかし、2006年末に導入した新しいMRIにより、図2のような画像で診断することができるようになりました。比べてみますと一目瞭然ですが、圧迫している血管の走行、圧迫の方向、圧迫されている神経の形等を立体的に把握でき、より的確な診断が可能となりました。この画像が、マルチボリューム法という最新の方法で得られたものなのです。
三叉神経痛・顔面痙攣の手術
このような繊細で鮮明な画像に基づいて診断し、手術を行っておりますので、現在一月にお一人ほどのペースで、手術治療を受けられる方がいらっしゃいますが、皆様、満足の行く結果が得られております。
手術は、耳の後ろを10cmほど切り、親指の頭くらいの穴を骨に開け、触っている血管を神経からはずします。いくら小さい範囲であっても、開頭手術ですので、入院から退院までには最短で10日ほどかかります。
顔の痛み・ピクツキで悩まれている方は、一度ご相談ください。
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